- 静岡県静岡市に、7人兄弟の長男として生まれる。
(10歳)
- 茶商を営む生家の家業が傾き、赤貧の日々が続いたが、終始「絵を描くのが大好きな子」と呼ばれる幼年期であった。
※幼年期のデッサン、水彩画、木彫習作などは、静岡県御殿場市の御殿場高原「時の栖 前島秀章美術館」に展示
(12歳)
- ふとした機会に遭遇した藤田嗣治のデッサン「横たわるユキ」に心惹かれる。その感動にせかせられるようにして、以後しばらくは素描に耽り、水彩の習作に明け暮れた。
(16歳)
- 運慶・快慶ら鎌倉初期の慶派彫刻に対する深い感銘が、立体制作への夢の萌芽となる。また、その意欲は急速にふくらむ。
三十三間堂の裏側のほの暗い廊下で
大勢のほとけ様に出会ったあの日。
16歳の私は、そこを動けなかった。
涙がボロボロと流れた。
そして、生涯を彫刻にかけようと思った。
慶派の仏像は、日本が誇る中世の遺産だ。
(17歳)
- 手探りの独学で彫塑の制作を開始したが、家族や周囲の反対を押し切っての決断はまさに孤立無援の状況であった。
- そして、2年後に念願の木彫に進展。
(20歳)
- 木彫のために定職に就けず、今言うところのフリーターで生計を立てる。次々と8種類も変えた仕事を通して人の心の喜怒哀楽を知った。
(25歳)
- 十二指腸潰瘍で開腹手術し、胃を摘出する。
- 体力的負担と精神的落胆のため、一時は彫刻を断念しようと決意するが、生きることの大切さを知り、その歓びを表現する素材として、木への執着をさらに深める。作風も「木にいのちを彫りおこす」方向へ移変する。
(32歳)
- 彫っても売れず、作っても評価されずの日々が8年間つづいた。もう彫刻をやめようかと思った時、初個展の話が舞い込んだ。
- 初個展 静岡松坂屋百貨店 6階美術画廊(1972)
(37歳)
- 第23回創型会彫塑展(東京都美術館)にて、1974年「啓示」、1975年「雲のモニュマン」で連続受賞し創型会会員となるが、現在無所属。
(41歳)
- 六大都市をはじめ全国各地で個展を開催(40歳代)。
- 人生を達観して大笑いする老夫婦、純真無垢の表情で微笑む童子、時に哀しげに瞑想沈思する鬼や動物など、さまざまな喜怒哀楽を表現した作品と、そこにある人間凝視の眼と人間賛歌のあたたかさが、多くの来観者に感動をひろげる。
〈宮城〉仙台藤崎本店
〈山形〉松坂屋
〈東京〉上野松坂屋、銀座松坂屋、池袋西武、渋谷西武
〈神奈川〉横浜高島屋、横浜そごう、横浜松坂屋
〈静岡〉松坂屋、亀山画廊、浜松松菱
〈愛知〉松坂屋本店
〈岐阜〉高島屋
〈京都〉高島屋
〈大阪〉梅田阪急、なんば高島屋本店
〈岡山〉高島屋
〈広島〉天満屋
〈鳥取〉米子高島屋
〈福岡〉岩田屋本店
※百貨店が統廃合等のため、現在と異なるところがございます。
(43歳)
- 寶頭盧尊者(びんずるそんじゃ)像制作。天昌寺(静岡市葵区上足洗)蔵。
- 5月21日 北堀昌雄住職により開眼供養
- 同日午後7時から、太田久紀(おおたきゅうき)氏による仏教講話が行われる
(52歳)
- 丸伸ビル(静岡県)ブロンズモニュメントの制作。
- パリ・ボルドーにて個展を開催。人間の足の裏に彫った仏像や手のひらに刻んだ大地の詩がフランス人の注目を集めた。
(56歳)
- 阪神淡路大震災供養「拓也くんのお地蔵さま」石造制作。震災モニュメントマップNo.86重池町「拓也くんのお地蔵さん」参照。
(57歳)
- 静岡県御殿場市神山の緑ゆたかな時之栖敷地内に、石造りで円筒型のユニークな2棟の美術館建設がはじまる。
(58歳)
- 4月、時之栖敷地内に建設中の美術館2棟が完成する。
- 4月11日、静岡県御殿場市「時之栖(ときのすみか)」に前島秀章美術館※開館。※現在は「時之栖美術館」と改名されている。
- 前島秀章美術館 第3棟「時之船の館」館内彫刻『時之舟』が完成する。
「時之船の館」館内彫刻『時之舟』完成
(御殿場高原「前島秀章美術館」現:時之栖美術館 第3棟内)
8月18日に完成した「時之船の館」では、21世紀を前に夢をいっぱいにのせた船が航海している姿を見ることができる。一本の無垢材を使用した船の上には、童子・妖精・動物たちが、それぞれの夢と希望を抱いて立座している。荒波に立ち向かう勇気をもって、人の分身となった彼らは明るい未来をめざしている。
(59歳)
- 長野県中野市の小内八幡神社「八幡さまの大欅」から、巨木のトンネルづくりがはじまる。
「八幡さまの大欅(けやき)」の制作
(「森の詩人館」入口通路のトンネル)
御殿場高原「前島秀章美術館」(現:時之栖美術館)の第3棟「時之船の館」から、第4棟「森の詩人館」へと入る通路には、人間が歩いて通れるほどの虚(うろ)を備えた巨木のトンネルがつくられた。
- 鎌倉・鶴岡八幡宮ぼんぼり祭り(8月初旬)にあわせて、墨彩画を揮毫奉納する。以降、毎年奉納。
(61歳)
- ダライ・ラマ法王静岡講演の歓迎委員長をつとめる。4月18日、学生時代からの親友である牧野聖修氏(元経済産業副大臣)のご尽力で、ダライ・ラマ法王がはじめて静岡市を訪れ講演をされる。牧野氏のご好意により、尊崇する偉大な人物の歓迎委員長の栄誉を賜る。
- 前島秀章美術館 第4棟「森の詩人館」館内彫刻が完成する。
「森の詩人(うたびと)館」館内彫刻完成
(御殿場高原「前島秀章美術館」現:時之栖美術館 第4棟内)
国内に例のないパワーあふれる巨木のある空間が、第4棟「森の詩人館」として2000年4月29日(みどりの日)にオープンした。
現在は、ブックカフェとなっている。
- 10月、「木彫40年 前島秀章 浮月楼展」をひらく。徳川慶喜屋敷跡、浮月楼ギャラリー館(静岡市葵区紺屋町)
(62歳)
- 「ココロの形 カタチの心展」(新潟県立近代美術館)招待出品。
(63歳)
- 鳳林寺 彌勒菩薩像制作(静岡市清水区)
- 8月9日、太平洋戦争の戦没者慰霊と平和を祈願して、曹洞宗桃原寺 増田亮雄老師・鳳林寺 平尾裕明住職らにより、彌勒菩薩像開眼供養
(64歳)
- 4月~5月「前島秀章美術館 開館5周年記念 特別展」をひらく。(御殿場高原「前島秀章美術館」)
- 開館5周年記念 特別展には、常設作品200点のほか、各所蔵家から出品をお願いした35点も特別出品展示される。
- 4月13日、記念講演会(午後1時~2時30分)が美術館第4棟「森の詩人館」にておこなわれる。
- JR静岡駅北口 ホテルアソシア玄関に『Associa あいちゃん』が完成する。
『Associa あいちゃん』完成
(JR静岡駅北口 ホテルアソシア静岡)
JR静岡駅北口 ホテルアソシア玄関のキューピッドスクエアにブロンズのキューピット像が誕生した。
市民から愛称を募り、858名の応募者の中から“あいちゃん”と決まり、静岡市民に広く愛されることとなった。
~Associa あいちゃん~
ブロンズ像の「Associa あいちゃん」は、木彫のオリジナルモデルから鋳造されました。
“愛を結ぶキューピット”として、その愛くるしい表情としぐさは、多くの静岡市民に愛され、
オリジナルの木像は ホテル1階ロビーに、
ブロンズ像は ホテル4階のチャペル入口に、
それぞれ展示されております。
- 「ナーシングホームあしたば」(静岡市駿河区)『新館壁面レリーフ』制作。
(66歳)
- お釈迦様のご誕生を祝っての釈迦生誕会「菩提樹院 花まつり※」(静岡市葵区沓谷)に特別出品。以降、毎年出品。
※由比正雪ゆかりの寺院「菩提樹院」にて、毎年4月8日頃の3日間にわたり開催。日程は、コチラ
- 「ナーシングホームあしたば」石像弥勒菩薩墓碑を制作。2005年8月10日開眼供養。現在、臨済寺(静岡市葵区大岩町)に安置。
- 『こころ豊かに、たくましくの樹』制作。学校法人鷲巣学園 梨花幼稚園(静岡市駿河区)蔵。
(67歳)
- 歌会始御題「笑み」によせて、伊勢神宮美術館特別展(三重県伊勢市)招待出品。
- 歌会始のテーマに触発され、招待出品作と並行してレリーフ『笑み』(個人蔵)を制作。
(69歳)
- 浮世絵と伊万里やき陶画の関係について研究をつづけ、江戸時代の浮世絵師葛飾北斎(1760~1849)作の絵手本「北斎漫画」や「富嶽百景」などが19世紀の古伊万里に与えた影響を発見し、その実証が注目を集める。
(71歳)
- 静岡駅前、葵タワーモニュメント『太陽賛歌』制作。
(72歳)
- 静清信用金庫 創立90周年を記念した大作『樹神像』制作。『樹神像』についてくわしくは、コチラ
- 母校 県立静岡高等学校 聖母子像『慈』制作。
(74歳)
- 日本武尊(ヤマトタケルノミコト)像『草薙の剣』制作。静清信用金庫草薙研修センター(静岡市清水区)設置。
- 『木花開耶姫(このはなさくやひめ)』像制作。
- 『木花開耶姫(このはなさくやひめ)』像除幕式。「世界の平和を祈る祭典 in 日本平〈芸術の祈り〉」11月22日。
平成25年11月22日澄み切った紺青の空のもと世界文化遺産の雄大な富士山を望む静岡の日本平に、ノーベル平和賞受賞者のダライ・ラマ法王をお迎えして世界の平和を祈る祭典が盛大に催されました。
仏教・神道・修験道・キリスト教・イスラム教などの各宗教を代表する方々が全国から集い、千人を超える参加者全員と共に平和について考え、祈る、それはそれは尊く美しい人々の姿でした。
祭典の冒頭「芸術の祈り」では私の新作木彫、富士山の御神体である「木花開耶姫」像をダライ・ラマ法王に除幕をして頂き至上の名誉でありました。
木花開耶姫は日本神話に登場する女神で、高天原(たかまがはら)から降臨した瓊々杵尊(ににぎのみこと・天照大神の孫)の妻にあたります。父は大山祗尊(おおやまずみのみこと)。瓊々杵尊は木花開耶姫が一度の契りで身籠もったことを知ると、他の神の子ではないかと不信を抱きます。姫は疑いを晴らすため、もし他の子であれば我が身は焼け死ぬであろうと自ら産屋に火を放ちました。
炎の中で産まれたのが火照命(ほでりのみこと・海幸彦)、火蘭降命(ほおせりのみこと)、火遠理命(ほおりのみこと・山幸彦)、山幸彦の四人目の孫が日本の初代天皇、神武天皇と伝えられています。
火を支配したことから木花開耶姫は山の神である父、大山祗尊から日本一の秀峰である火山の富士山を譲られました。木花開耶姫は噴火を鎮める神として、また日本を守護する神として、今も富士山に鎮座しています。
※写真はダライ・ラマ法王日本代表部の許可を得て使用しております Photo:村田 豊
- 現在、『木花開耶姫』像は、静清信用金庫沓谷支店に設置されております。【所在地】静岡市葵区沓谷5丁目64番地の7【電話番号】054-261-8111
支店のある「沓谷(くつのや)」は、木花開耶姫がこの地で沓(くつ)を脱ぎ、「上足洗(かみあしあらい)」にて足を洗ったという伝説にちなんでいます。(角川日本地名辞典による)
「駿河には すぎたるものが二つあり 富士のお山に 原の白隠」と謳われた
郷土の禅僧 白隠慧鶴(はくいんえかく・1685~1768)は、
宗教の世界だけにとどまることのない
スケールの大きさをもった希有の存在です。
その余波は、時空を超え、現代にまで及び海外にまで影響を与えています。
白隠の存在は、長い日本美術史のなかにあって、まさに富士山のように屹立しています。
富士山が世界遺産になった2013年、白隠を制作できることを誇りに思います。
- 「作家活動55周年記念 前島秀章展 ~生を謳う、年輪の形象~ 神話彷徨」が開催される。10月22日~27日、静岡伊勢丹 8階=大催事場
(77歳)
- 『樹誕』完成(横浜医療福祉センター港南)5月12日。
【所在地】神奈川県横浜市港南区港南台四丁目6-20 【アクセス】JR根岸線「港南台駅」より徒歩10分 【マップ】こちらをクリック(別ウィンドウ)
胴部に大きな亀裂を持ち、中が空洞の巨木。
大きな障害を抱えながらも岐阜県徳山の地に、生き続けた栃(トチ)の木の奇跡的な強い生命力。
たくさんの子供の笑顔、昆虫、鳥、魚、動物たち。
雌雄一対の命を主題にして、巨樹のパワーには、明るく和やかな笑顔があふれています。
(フランスでは、栃の木をマロニエと呼び、愛されています。・西洋トチの木—マロニエ・)
(79歳)
- 「時空を超えた木彫芸術 前島秀章展」が開催される。3月21日〜27日、日本橋三越本店 本館6階 美術特選画廊
- 「第2回 時空を超えた木彫芸術 前島秀章 柿田川展」が開催される。9月29日〜10月8日、清水町地域交流センター 静岡県駿東郡清水町堂庭6−1
【主催】清水町・清水町教育委員会 【協力・お問合せ】亀山画廊
(81歳)
- 彫刻家 前島秀章・久代夫妻寄贈の人形コレクション『人形の美 語りかける ひとがた』展が開催される。2月22日~4月5日、佐野美術館 静岡県三島市中田町1-43
艶やかな肌の御所人形、ちろりと舌がのぞく首振りの嵯峨人形、
幼子の面影を映した抱き人形…江戸から明治時代にかけて、
日本中で愛されてきた人形たち。このたび佐野美術館に、
日本の古人形を中心とした人形コレクション約200点が寄贈されました。
これらの愛すべき人形たちを蒐集したのは、静岡の彫刻家・前島秀章氏夫妻です。
前島氏は「人形(ひとがた)」に、命の尊さと人体の神秘を見、
古来人形に込められた日本人の魂を自らの制作の師としてきました。
美しく愛らしいだけではない、見る者の心に訴えかけてくる日本の人形たち。
その独特な造形美をご堪能いただきます。
本コレクションには、近代日本を代表する人形作家・平田郷陽(ひらたごうよう)の作品や、
ヨーロッパの著名な工房によるアンティーク・ドールなども数多く含まれます。
古今東西、大切に伝えられてきた人形たちの競演をお楽しみください。
(「人形の美 語りかけるひとがた展」リーフレットより原文)
- 「時空を超えた木彫芸術 前島秀章展」が開催される。6月17日~6月22日、日本橋三越本店 本館6階 美術特選画廊
(82歳)
-
「作家活動60周年記念 時空を超えた木彫芸術 前島秀章展」が開催される。10月13日~10月18日、静岡伊勢丹8階 大催事場
「月刊美術」2021年10月号より引用
(83歳)
-
母校の静岡高が2028年に創立150周年を迎えるのを機に、「高きを仰ぐ」を意味する校訓「卬高(こうこう)」をテーマとした大作を同校に寄贈。
今や日本を代表する木彫作家の一人として評せられるが、さらに深く生を見つめた制作への精進が続く。
〈おもな著書〉
「工房独話」(研成社)
「木彫創作面のすすめ」(日貿出版社)
「木の精たち」(京都書院)
「楽しい絵文様の伊万里やき」(創樹社美術出版・小木一良氏と共著)などがある。
〈美術館〉
時之栖美術館は、多くの皆様に愛されましたが、現在は多目的ホールになっています。
http://www.tokinosumika.com/enjoy/stroll/museum.php